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篠田英朗HPC代表と玉内みちるHPCシニア・アドバイザーによる対談

篠田:本日はお忙しいところありがとうございます。玉内さんにはいつも研修において多大なご貢献をいただいて、この機会に改めてお礼を申し上げたいと思います。玉内さんにはこの事業が13年前に最初のパイロット事業として立ち上がった時から、ずっと側面から支援していただきました。国連を早期退職されてからは時間の融通が利くということでかなり研修に付き添っていただき、玉内さんでないとできない個々人のキャリア相談を提供していただいております。
玉内さんにお願いしているこのキャリア構築の部分は、HPCにとって重要領域ですが、玉内さんには相談業務をやっていただき、大きなご貢献をしていただいております。こうした経緯をふまえて、玉内さんは今までの研修で何を一番強く感じられましたか。

玉内:そうですね。HPCの研修と13年関わってきまして、やはり特にプライマリーの研修員の方々が実力を発揮していく、実践的な学びの場を経て、国連職員として活躍して世界各地に散らばっているということで非常に私としても心強く思っています。素晴らしい講師の方々と共に学んでさらに成長して、自己実現をしていっている若い世代から、今は中堅どころになっている方々もおり、それが継続していっているということはすごく素晴らしいこと。継続は力なりで、この事業が継続するということは今からの若い人たちにとって、過去の色々な良い事例が引き継がれてさらに国連に入りやすくなりますし、国連で働くということは、やりがいのある職場で多様性もあって色んな醍醐味のあることだと思います。様々な国の人々と働いて困難もありますけど、それに対する対処方法などもHPCの研修では蓄積があるので、飛行機で言えばテイクオフがもっと楽になるという、そういったところがあると思います。

篠田:プライマリーコースは特に12年間実施しているわけですけれども、入ってくる研修員の方に「この研修に入ると何をしなければいけないですか」という根本的な精神に関わるような質問を受ける時もあります。まず一番私が言わせていただいているのは、ピースビルディング、平和構築を続けてほしい、と。国連に残るか残らないかというのは結果論だし、色んな要素もあると思うんですね。偶然の要素で残っていたり残っていなかったりすることもある。あるいは国連に残る人もある一定の期間色々な事情や色々な考えで国連を離れる期間があり得るし、そのこと自体むしろ飛躍の土台になる可能性もあるので、瞬間瞬間を取っていちいち細かい評価をするべきでないということもあります。それも含めて全てやっぱり平和構築に関心をもって頑張っていただくということが大前提なので、そういう気持ちが高まるような研修を作りたいな、そういう気持ちを持っている人の役に立つことをしたいな、ということを研修では心がけています。12年間のプライマリーの修了生がいるということで、日本人だけを見ても、外国人研修員との繋がりもとても大きな財産で、世界中で我々も把握できないくらいの色々な人と出会い続けてくれていますね。日本人だけで既に180人くらいの修了生がいるいうことで、この事業は契約事業なのでなかなか契約の期間を超えた継続性というのは仕組み上簡単には取れないということもあるのですが、何とかそれを努力・克服して修了生同士の繋がりとかネットワークというのを、研修員・修了生が利益を感じるような形で今後も発展させていきたいなと思っています。世代を超えた繋がりも、研修員・修了生の利益になるようにどんどん図っていきたいなと思っています。
最近出しました昨年度の活動をまとめた小冊子平成30年度事業活動レポートを見ていただくと、活動の内容の全般的な紹介が行われているんですけれども、例えばP16にプライマリーコースの研修員・修了生達が今どんなキャリアを歩んでいるのかということが書いてあります。https://peacebuilderscenter.jp/program-graduates/
この事業をやり始めて13年目なのですが、「よくそんなに長くやっていますね」と言ってくれる人もいます。HPCがやっている事だけでなくこの事業自体が続いていることがすごく大きいわけですが、それはもう一言でいうと修了生達のパフォーマンスが素晴らしいという評価をいただいているので、だったらまたやった方がいいのではないかという評価も繰り返しいただいていることなのですね。

玉内:国連の全邦人職員数っていうのはだいたい850人くらいですかね。そうするとHPCからの貢献というのはパーセンテージで言えば高いですね。

篠田:そうですね。そろそろ国連邦人職員の何パーセントはHPCを通過しているという言い方も出来ないことはないくらいの数にはなってきましたよね。

玉内:国連に残るということも大切なのですが、それ以外にも、その後のキャリアも見てみると政府の省庁に行ったり、JICA、民間、シンクタンクと皆さん本当に国連以外でも活躍していますね。その時に平和構築の概念を頭の中に入れながらさらに、プランニング・モニタリング・コーザルアナリシスとかHPCで学んだツールを使いながら活躍していらっしゃると思うので、それは非常に素晴らしいことだと思います。特に今キャリアが多様化している日本では、こういった様々な分野で活躍した人たちというのは日本にとって非常に有益なグローバル人材になると思うんですね。特に民間から国連に行ってシンクタンクに行くとか、そうすると包括的に物事を見る力も養われますし、HPCでは分析的な能力を体験的に伸ばすのでそういった分野での人材を輩出しているということも、国連に限らず評価されるべきだなと思います。

篠田:そうですね。国連は人的流動性が高いというか、国連の同じ機関にいる人も次の同じ機関のポジションを申し込みますね。人事部から紙を一枚もらうのではなくて、自分から積極的に申し込むという作業を経て、同じ組織の中であっても移動していくというのが普通ですよね。だからすごく自己責任をもって、自分のキャリアプランをもって、国連の中あるいは外のポジションと組み合わせてキャリアを構築していくことが前提になっている世界だと思うんですね。もし日本が新しい人事の仕組みに変わるとすれば国連との親和性を高めるような形で日本社会を脱皮させていかなければいけないと思います。この事業に入ってきていただいている方、これから入る方は、まさに日本社会が目指している方向性の先頭を行くような形で、国連や国際機関に行って縦横無尽に活躍していっていただきたいなと思っています。やはり国連職員になることの魅力というのは、自分の考えでクリエイティブに自分の人生、キャリアを作っていくことができるところかな、とこの事業を通じて何度も繰り返し思うところですね。

玉内:魅力というと、やはり男女差なくやりがいをもって自分の考えで展開できるということもありますが、男女ともに働き方、ワークライフバランスが充実しているという点が挙げられると思います。国連ではほとんどの方が休暇を1ヵ月~1ヵ月半取りますし、定時で帰る習慣もあります。もちろん働く時は働いて緊急援助の時とかは24時間という感じなんですけれども、ワークライフバランスがもうすでに人事のポリシーの中に入っておりそれが活用されています。さらに女性にとっては託児所がある機関や、教育助成金も出たりするので、そういった点では女性が活躍できる場所だと思います。男女差はありませんが、多くの日本人女性が国連機関でも重要な職務についておりますし、ワークライフバランスを取りやすいですね。

篠田:国連では人事の流動性が高いということは、雇用者側は被雇用者に気を遣ったりする度合いが高いところもある。若い人にとっては、そういう職場のほうがが働きやすい可能性は高いのではないかと素朴には思いますね。国連の提供してくれる給料水準は日本の社会の平均値からすれば今は結構いいんじゃないのかなって思いますし、なんといってもお子さんが出来ると教育補助がまとまっていただけるのも、人生の選択をする中で重要な要素ですよね。HPCは、国連が提供する社会福祉制度などをウェブサイトにまとめて読めるようにもしています。https://peacebuilderscenter.jp/pdf/2016-03.pdf 子供が増えると、メリットが大きくなりますよね。国連のキャリアには合理性があるんじゃないかってことを言いましたけど、玉内さんはどう思われていますか。

玉内:国連で働く一つの醍醐味は、グローバルな課題に取り組むという点です。たとえばSDGのゴールを理解して貢献したいという志がある、そういった方々が活躍できる場を提供しているということが一つの醍醐味ですよね。二つ目は、多様性がある方々とチームを組んで同じ目標に向かっていくということ。自分自身への挑戦でもあり喜びでもあります。この日本の社会の中でこういう経験をするっていうことは非常に稀なことなので、将来日本も多様性が大切になってきたときに、その先駆者になる、国連を経験した方はもう訓練を受けている方々なので非常に日本の社会にとっても有益です。国連の中では、上司がスウェーデン人であったりフランス人であったりケニア人であったり、とにかくあらゆる上司部下を統括して一緒に働いていくことになります。こういった経験は人生の中で生きていきます。革新的で創造的な、創造性というのは色んな違うアイディアが混ざってクリエイティブな考えが出ると言う理論もありますけれども、日本にとっても世界にとっても必要になってくる創造性が生まれる要素になります。多様な考えや人々や価値観にふれていくことは、日本は単一の民族と言われていて同じような価値観、そこの枠から出ることが非常に大切になっていますが、その場を提供してくれて、やはり若い人の中でも発想の転換というか、今までこうしなければならなかったというような慣習にとらわれて実力を発揮できなかった人が国連に入って実力を開花しているといったことが見られますので、その点も国連職員としての醍醐味ですね。

篠田:この事業を通じて、あるいは事業外でも研究者として様々な形で国連の職員とお話をさせていただき、例えばもうUSGになられましたが、以前は講師としてご貢献していただいていた中満泉さんのような方、その他素晴らしい講師と接して私が一番思うのは、国連職員は信じているものがある、ということですね。難しい問題に立ち向かうことが必要なんだと、国連職員の方は本当にみんな信じていらっしゃる。上に上がった人になればなるほど本当に信じているなっていうのが伝わってくる。国連で素直にすごくいいなと思うのは、信念を持つ人が認められていること。国連は信念を持っている人を求めているという価値観が確立されているのは、すごくいいな、と思いますね。正しいことを正しいと思うと言った人が、恥ずかしい思いをしたりせずに正当に評価される、それはすごく大きな一つの魅力なんじゃないかなと。自分自身の人生豊かにするためにも、私はこれを正しいと思うからやるんだと言える社会に生きるというのは、すごく大きな要素なんじゃないかと感じますね。だからもっともっと多くの日本人に国連に関心を持ってもらいたいなとも思いますし、できればこのグローバル平和構築人材育成事業も、非常に合理的なキャリア構築の一手段、一ルートとして見ていっていただきたいなと思っています。
玉内さんにはこれからもお世話になりますが、今後ともどうぞ宜しくお願い致します。


(右から、篠田英明HPC代表、玉内みちるHPCシニア・アドバイザー)

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